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院長ブログ

その本との出会いは、たぶん小学生低学年くらいの頃。
当時まだ歯科医師として働いていた母が、歯科医師会だか何かの打ち合わせで、外出した帰りに買ってきてくれた。
「シートン動物記」の『おおかみ王・ロボ』だった。
それまでは、日本の昔話や世界のおとぎ話を読んでいた。
それとは異なるこの本が幼心にも衝撃だったから記憶に残っているのだろう。
挿絵が、それまで読んでいた絵本とは違い、リアルでちょっと怖かった。
しかし、その夢ではないリアルさが、「ぼくは、もう絵本はソツギョウだ!」と、
大人になった気分にしてくれた。
違ったのは、挿絵ばかりではない。
ページの中には活字があふれ、絵本の世界とはまったくことなる現実の世界の話があったのだった。
著者シートンの実体験が基になっているので、
どんどん話に引き込まれ、わくわくしながら『おおかみ王・ロボ』はあっという間に読みきった。
読み終わったときに、パタンと閉じる、本の重みとしびれる腕。
頭なのか心なのかはわからないのだが、どこかが充足感で一杯だった。
本を読んで、満ち足りた初めての体験が『ロボ』だった。

場面が急展開になると、ページをめくる指と、その先を早く読みたい気持ちの両方が競い合うようにして、先へ先へと後押しする。
いいところで、「ご飯よ」とか「お風呂!」とか「もう寝なさい」といわれても、
それどころじゃないんだ!!と、夢中だった。
布団をかぶって、懐中電灯で照らしながら読んだりもした。
行と行が少し離れていて、場の雰囲気を描写しているページは、
後から戻って、何回も読んだりした。
このロボとの出会いが、その後の多くの本との出合いにつながる。
動物記、昆虫記、偉人の伝記・・・
夏の日は膝の後ろに汗をかきながら廊下のソファーで、
秋は夕飯の支度の匂いがするキッチンのテーブルで、
冬は家族が集う暖がとれる大部屋の一角で読んでいた。
紙のにおいもなんだか気持ちよくかんじた。


こういう体験を、次世代の子供たちはするのだろうか?
本 がなくなる日が来るかもしれない。
院内をデジタル化して、
最近、生活のさまざまな部分での電子化が気になる。
積極的にテクノロジーを取り入れるべき部分と、
いわゆるアナログな感じを残しておくべき部分が必ずあると思う。
そして、この両者はまったく相容れないのに、
人は器用にそれを受け入れて生活していくのだろう。
車が空を飛び交う、その下に広がる公園で、全天候型・宇宙服のような格好をした子供が「おおかみ王・ロボ」のページをめくる。
紙のページをめくっていて欲しいなと思う。
その指が、人差し指一本で、電子媒体の本をめくっていたら・・・
自分が感じてきたような、五感にもしみこむような本の記憶が残るだろうか?

時には
便利じゃないことが、多くの発見を生み感動を呼ぶ。

投稿者 namba-dental (00:43) | PermaLink

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